三重県松阪市 ゆりわれ登山口
奈良県東部の御杖村(みつえむら)から、三重県松坂市と津市にまたがる三峰山(みうねやま)。
標高約1,235メートルとそれほど高い山ではありませんが、初夏に咲き乱れるツツジの花や5月中旬から下旬にかけて見られるシロヤシオ、「エビの尻尾」とも呼ばれる冬の霧氷など、四季折々の変化が大変美しく、日本三百名山にも数えられるほど。

そんな三峰山を、三重県側から登るための登山口のひとつに“ゆりわれ登山口”があります。
“ゆりわれ登山口”から入るゆりわれルートは、室生赤目青山国定公園に指定される八丁平を経由して三峰山を目指す、全長6キロメートル弱の自然林が広がる静かな登山ルートです。
あたり一帯、落葉樹が多いことから、冬に近づくにつれ葉が落ちて視界が開け、紅葉や雪におおわれた絶景を愉しむことができるのだとか。
登山ブームを機にトイレ設置計画がスタート
標高約740メートルの位置にあるこの“ゆりわれ登山口”には、高見山を望む駐車場があります。
未舗装ながら十分な広さのある、きれいに整地された駐車場ですが、奈良県側から登頂するルートに比べるとゆりわれルートを利用する登山客が少ないせいか、これまで公衆トイレは設置されていませんでした。

ところが、コロナ禍におけるアウトドアブームの影響もあってか登山客は年々増加の一途をたどり、いつしか「トイレがない」ことが観光客を迎え入れるうえでの障壁となっていることを実感。
“山”は貴重な自然資源であり、観光資源のひとつです。
このアウトドアブームを機に、三重県松坂市では地元の登山愛好家や観光客に向けた公衆トイレの設置に踏み切りました。
再生可能エネルギーを利用してトイレも脱炭素
しかし、下水が通っておらず、浄化槽も設置できない山や登山口では、一般的な水洗トイレを設置することは容易ではありません。必然的に、排泄物を自己処理できる機能が求められます。
数あるバイオトイレのなか、松坂市が『newto』の存在を知ったのは、弊社関係会社からの提案がきっかけでした。
汚水をろ過しながら循環させることで、洗浄水として繰り返し使用できる、水洗タイプのバイオトイレ。
おがくずや杉チップなどを使ったバイオトイレに比べると処理槽の構造が非常にシンプルで、故障が少ないという点も特長のひとつです。
さらに『newto』では、トイレユニット本体に太陽光パネルと風車・蓄電池を搭載することで、自然エネルギーを電源として活用できるという点でも高く評価されました。

そして、採用されたのが、完全独立型の自然エネルギー循環式トイレ『newto(ソステネーレ)』。
太陽光と風力を使って自家発電するため、系統電源を必要としません。水も電気もいらない、環境にやさしいトイレです。

1日30回の使用を見込んだ、男女共用1室タイプの屋外トイレ。
シンプルな外観で住居用・店舗用としても人気のコンテナを使用したユニットトイレは、軽量鉄骨トイレよりも安定感があり、コンクリートトイレよりも現代的でクリーンなイメージがあることから、近年、公衆トイレとしての需要も増えつつあるようです。
太陽光パネルと風車が見せる圧倒的な存在感
設置したのは、“ゆりわり登山口”駐車場の入り口付近。
トイレを設置する部分に基礎としてコンクリートを敷き、その上にコンテナユニットを置いて固定します。

外観カラーは、周囲の景観を邪魔しないホワイト一色。
屋根に3枚、背面に3枚の計2,250Wの太陽光パネルと500Wの風力発電、容量8.8kWhの蓄電池を搭載しています。


ユニット上部に立ち上がる風車が、まるで“ゆりわれ登山口”のアイコンでもあるかのように存在感を放ちます。
登山客にやさしく、環境にもやさしい屋外トイレ
アウトドアファッションの人気に火がついたのをきっかけに、全国で“山ガール”という呼称が広まったのが2009年。あれから、すでに10年以上が経過しています。
“山ガール”ブームはすっかり去ってしまったようにも見えますが、実は女性の登山愛好家は当時よりも増えており、その存在が定着したことにより“山ガール”という呼称だけが廃れていったのだともいわれています。
女性の登山客やアウトドアブームによるビギナー登山者が増えているということは、当然ながら山や登山口へのトイレ設置需要も増えているはずです。
松坂市ではちょうどよい時期に、登山口のトイレ設置に踏み切ったといえるのかもしれませんね。

山の入り口にトイレを設置することで自然資源の活用を促進し、さらには脱炭素社会への取り組みを強化・PRできる『newto』の設置は、ゼロカーボンシティを宣言する松坂市にとっても、多方面へベネフィットを提供できる有益な事業となったに違いありません。
登山客にやさしく、環境にも配慮した完全独立型の水洗式バイオトイレが、今後も“ゆりわれ登山口”のシンボルとして、『newto』が多くの登山客から親しまれ、ご利用いただけることを願っています。
循環式トイレで
あなたの街の地域循環を促します